馬術は馬に乗るスキル、技術のことで、競馬のような速さを競う競技と比べると日本ではマイナーです。その歴史は古く、ルーツはユーラシア大陸の民族の間で発達したといわれています。
残っている記録の中でも古いものは紀元前1400年頃の書物で、これが最古と見られます。紀元前400年頃の書物は現代に通じるところが多く、この時代には既にかなりの部分が完成していたと考えられます。以降は長らくヨーロッパの貴族の間で、嗜みとして定着したり広まりました。貴族が技術を磨き高めた結果、馬に乗る技術が洗練されていくことになります。
日本においては4世紀頃に中国から伝わり、6世紀頃までに広まったと思われます。鎌倉時代以降に様々な流派が生まれましたが、江戸時代になると平和が訪れ、やがて廃れることになります。しかし、黒船来航などにより、明治時代になると様式の馬術が取り入れられました。このように世界的に歴史が古く、今では国際的な大会やイベントで競い合う競技となっています。
世界的な組織で競技の運営を行っている国際馬術連盟は、1921年に設立されました。本部をスイスに置き、オリンピック競技やそれ以外も認定しているのが特徴です。オリンピックでは馬場や障害飛越、総合の種目が知られています。馬場は馬が美しく見えるようにコントロールするもので、定形の馬場において1騎ごとに披露します。コースが決まっており、地点間ごとに歩き方や歩く速さなどが定められます。他にも自由に披露できるフリースタイルもあって、音楽に合わせながら馬の美しさを見せます。障害は文字通り障害物を使うもので、コースに設置されている障害物を飛び越えて進むものです。
イギリスの上流階級の中で生まれたブリティッシュ馬術の影響が色濃いので、礼儀も競技に含まれます。服装の指定や敬礼の規定もありますから、選手の立ち居振る舞いの美しさも求められます。直線的に走る競争とは大きく異なりますが、競走から転向した馬が大会に出場して優勝したケースは珍しくないです。総合はあらゆる馬術の要素が取り入れられており、馬場やクロスカントリーと障害飛越などで構成されます。
クロスカントリーは自然に近い環境で行われ、生垣や池といったものが設置されます。これらが設置されている最短ルートを狙うか、遠回りでも確実性を選ぶか、選手による駆け引きが起こります。着順やタイムを競うシンプルな競馬と比べて、ルールがやや複雑だったり、見どころが分かりにくい点は否めないです。ただ、人馬一体になって見せる姿は美しく、優れた技術により披露される洗練されたものが人々を魅了するのは確かです。