与那国馬とは与那国島に生息する日本固有の在来種で、1969年3月25日に与那国町の天然記念物に指定されています。種類としてはポニーに分類されており、毛色は鹿毛が中心で体高は110~120センチ、体重200キロ前後と比較的小型であることが大きな特徴となっています。
来歴は明らかになっていませんが、与那国島では南方の島々からやってきたという説が唱えられていました。現在では遺伝子解析によって日本各地に残る日本在来馬と同じ系統に分類されており、古墳時代以降に朝鮮半島から日本に渡来した馬の集団が由来とされています。日本最西端の離島である与那国島のみで生息しているため、他品種との交配や品種改良が行われずに現在までその系統が保たれていることが特徴で、古くから農業を中心に農作物や薪の運搬、乗用などに活躍していました。与那国馬という名がつく以前から「チマンマ(島馬)」と呼ばれて島の人々に愛されていましたが、農機具や自動車の普及などによりその役割を失うと1975年には59頭にまで数が減少してしまいます。
しかし、同じ1975年に「与那国馬保存会」が設立され保存と増殖への取り組みが始められた結果、2018年には約130頭にまで回復しており、現在では野生の他に島内のいくつかの牧場で集団で飼育されています。道路にはテキサスゲートと呼ばれる牧場の外に出ないように溝が入った設備や、自由に水を飲める施設などを作って保護に努めていますが、絶滅危惧種であることは変わりがないため場合によっては与那国島以外の土地でも増やしていく検討も始まりました。
このような歴史を持つ与那国馬ですが、その性格は素直で温厚です。馬は一般的に噛んだり蹴ったりという印象が強いため「怖い・危ない」と敬遠されたりしますが、サラブレッドなどと比較すると別の生き物のようにおとなしい性格です。人を攻撃することもありませんので、接し方さえ間違えなければ安心です。
現在では農業での需要がないため主に観光用に利用されている他、人なつこい性格を活かして動物療法にも利用されています。島内にある「ヨナグニウマふれあい広場」では、自家繁殖とホースセラピーに向けた調教を行っているだけではなく、馬を使ったさまざまな遊びのアクティビティも楽しむことができます。与那国馬と海に一緒に入って遊んだりトレッキングすることが可能で、与那国島における人気観光スポットとして注目を集めています。